なみのおと

酒井耕・濱口竜介監督

東北記録映画三部作 第一部

2011年製作|ドキュメンタリー|日本語|カラー|142分|監督:酒井耕・濱口竜介|撮影:北川喜雄|製作東京芸術大学映像研究科|製作者:堀越謙三・藤幡正樹|製作助成:芳泉文化財団|German Japanese Association|製作協力:せんだいメディアテーク<3がつ11にちをわすれないためにセンター>|配給:サイレントヴォイス|宣伝:佐々木瑠郁・Playtime

NEWS最新情報

About作品紹介

今作品は2011年3月11日の津波被害を受けた三陸沿岸部に暮らす人々の「対話」を撮り続けたドキュメンタリー映像です。姉妹、夫婦、消防団仲間など親しいもの同士が、震災について見つめ合い語り合う“口承記録”の形がとられています。互いに向き合い対話する事は震災そのものに向き合うことでもあるのかもしれないと考え、被災地の悲惨な映像ではなく、対話から生成される人々の「感情」を映像に残すことで、後世に震災の記憶を伝えようと試みました。撮影を進める中で2人の監督も互いに対話を重ね、震災を自らに関わる出来事として受け止める姿勢をより強くしていきました。
『PASSION』『The Depths』などで注目される濱口竜介が、『ホームスイートホーム』『CREEP』を手掛けた酒井耕と共同で監督。142分の最新版での上映となります。


「この“語り”は、実際は過去や未来のためという以上に、今まさに起こっている「復興」の活動そのものなのではないだろうか、という気がしています。それは、瓦礫をただの瓦礫にしないための、個人と共同体の歴史を取り返す作業であるからなのです。」(山形国際ドキュメンタリー映画祭・東日本大震災復興支援上映プロジェクト「Cinema with Us ともにある」カタログより 作者のことば)

Storyあらすじ

岩手県田老町の女性によって読まれる昭和8年3月3日の大津波の紙芝居にはじまり、気仙沼、南三陸、石巻、東松島、新地町と南下しながら、消防団員や市議会議員、夫婦や姉妹など、親しい者同士や監督との対話が行われる。津波の恐ろしさや悲惨さと復興への強い思いが混在したその声は、鑑賞者も含めた聞き手の存在によってこそ生まれる貴重なものであり、100年、200年先まで伝えるべき価値を宿している。


移動の間に朗読される昭和8年津波被害を記録した山口弥一郎のテクスト、冒頭の紙芝居、土地の風景や音とともに、幾度も津波に襲われた歴史をもつ三陸の姿とそれでもそこに住み続ける人々の意志とが描かれ、故郷とは何かという問いが自ずと発生する。土地の記憶を切断してしまった出来事を、語り継ぐ言葉のひとつひとつがその答えなのかもしれない。

Trailer予告篇

Director's Noteディレクターズノート

戦争後の映画はネオリアリスモ的に焼け野原を撮ったわけだけど、今回の震災では、「東京は日常である」という状況がある。この震災をなかったことにしようとしている”日常力”が働いているというか。日常ってこんなに強いのかと思わされた。これは日本だけなのかどうかわからないけど、日本全体が非日常性を押し込めたりする傾向が強いですよね。「昨日」と「今日」を同じにしようとする力がすごい。…昨日と今日を同じにはできないのでは?と当然なると思っていたのに、社会全体はまるで昨日と今日は何も変わっていない、と言おうとしている雰囲気が何となしにある。(濱口)

「なみのおと」の撮影で被災者の話しを聞く際、はじめは少しビビりながら聞いていた気がします。でも、むしろ被災者の方から歩み寄ってきてくれ、行く先の不安みたいなものを逆に救ってくれた。聞いていいんだって。だから、震災後にも世界はつながっていてそれも日常だったように、他者とのコミュニケーションの失敗の先にも、別のコミュニケーションの可能性が開かれているんじゃないかと思えた。…それは、日常が昨日と同じ今日を望むだけでなく、今日と違う明日と契約関係を結ぶことにつながるかもしれない。(酒井)

出典:せんだいメディアテーク機関誌 ミルフイユ4 mille feuille4  赤々舎

『なみのおと』では、東日本大震災の被災地の中でも、特に津波被害に遭われた岩手県から福島県の沿岸部で暮らす方々に、震災発生当時のことを中心に語っていただきました。今回我々が写した”語り”は被災の記録として、もちろん次代へのメッセージ、警鐘にもなるものです。しかし、この記録は、「そこで起きたことはいったい、何だったのか」を示すとともに、「そこにはいったい、誰がいたのか」を確かめるためのものでもあります。記録されたこの「語り」は、過去や未来を映すための手段というより、今まさに起こっている「復興」の活動そのものに思えます。それは、瓦礫をただの瓦礫にしないための、更地をただの更地にしないための、記憶を取り返すためのいとなみであるからです。

もう聞くことのできない声があります。それでもその声を聴くために、見ることのできない風景を視るために、彼らの語りに耳を澄ますところから、私たちは始めたいと思っています。(酒井耕/濱口竜介)

酒井耕/SAKAI Ko

1979年長野県生まれ。映画監督。現在の活動拠点は東京。東京農業大学在学中に自主制作映画を手掛け、卒業後、社会人として働いた後、2005 年に東京藝術大学大学院映像研究科監督領域に入学。修了制作は『creep』(2007年)。『ホーム スイート ホーム』(2006年)、濱口と 共同で東北記録映画三部作『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』を 監督。

濱口竜介/HAMAGUCHI Ryusuke

1978年神奈川県生まれ。映画監督。現在の活動拠点は神戸。東京大学文学部 を卒業後、映画の助監督やテレビ番組のADとして働いた後、2006年に東京藝 術大学大学院映像研究科監督領域に入学。修了制作は『PASSION』。劇映画 としては『親密さ』(2012)、『不気味なものの肌に触れる』(2013)を監 督。2011年~2013年にかけては東北記録映画三部作『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』を酒井と共同で監督した。

Theater上映履歴

東京 P3 art and environment P3 art and environment 2015年3月20日
神奈川 シェアリーカフェ 特定非営利活動法人I Loveつづき 2015年1月24日
宮城 せんだいメディアテーク 対話の可能性「記録と想起」展 2014年12月20日
東京 K’sシネマ シネマトリックス 2014年11月20日
福岡 福岡県立美術館 福岡県立美術館 2014年10月25日
京都 Art Space 寄す処 Art Space 寄す処 2014年10月11日
福岡 築上町文化会館コマーレ 築上町男女共同参画ネット 2014年6月15日
長野 松本市中央公民館 松本CINEMAセレクト 2014年4月11日
群馬 ギャラリーコアホール 高崎映画祭 2014年4月2日・3日
東京 アーツ千代田3331 311映画祭 2014年3月10日・29日
沖縄 沖縄振興開発金融公庫 個人 2014年3月25日
静岡 鴨江アートセンター NPO法人クリエイティブサポートレッツ 2014年3月3日
岡山 cafe moyau よるのふね 2014年3月2日
岡山 やっち よるのふね 2014年2月22日
埼玉 ポエトリーカフェ武甲書店 個人 2014年2月22日
兵庫県 SPACE233 個人 2014年2月20日
福岡 クローバーホール きりん文庫かすが 2014年1月29日
三軒茶屋 ふろむあーすカフェおはな にっしぃ劇場 2014年1月11日
渋谷 渋谷アップリンク 2013年11月16日~
東京 オーディトリウム渋谷 2013年11月9日~

Commentaryコメント

真正面に据えられたカメラによって、家族が、友人たちが、同僚たちが、語り手と聞き手が、それぞれの声と顔を持ったひとりの人間へと分割されていく。それが感動的なのは、そこで「他の誰でもないその人そのもの」が映しだされるからではない。そうではなく、対話相手との間合いや呼吸が、彼らの関係性が、ひとつの顔の中に描きこまれていくからなのだ。パーソナルな物語を語る彼らの声と顔ひとつひとつに、歴史や約束、愛といったソーシャルなものが既に織り込まれているからなのだ。

結城秀勇/YUKI Hidetake

映画批評/雑誌「nobody」編集部。同誌24号から36号まで編集長。共編著に「映画空間400選」(LIXIL出版)