なみのこえ新地町 / 気仙沼

酒井耕・濱口竜介監督

東北記録映画三部作 第一部

2013年製作|ドキュメンタリー|日本語|カラー|109分(気仙沼)103分(新地町)|監督:酒井耕・濱口竜介|実景撮影:北川喜雄・佐々木靖之|整音:鈴木昭彦・黄永昌 カラリスト:馬場一幸|製作者:芹沢高志・相澤久美|製作:一般社団法人サイレントヴォイス|宣伝:佐々木瑠郁・Playtime|製作助成:公益財団法人 企業メセナ協議会(GB Fund)・NPO法人 あーとNPOリンク(アートNPOエイド)・P3 art &environment・一般社団法人 震災リゲイン|製作協力:せんだいメディアテーク<3がつ11にちをわすれないためにセンター>・NPO法人 記録と表現とメディアのための組織 remo|機材協力:東京藝術大学映像研究所|協力:新地町役場・目黒鉄工・相馬双葉漁業協同組合新地町支所・新地町図書館・気仙沼市民会館・気仙沼商工会議所・気仙沼本吉地域防災センター・気仙沼漁業センター・気仙沼大曲コミュニティセンター・細谷修平・株式会社はらほろ

NEWS最新情報

About作品紹介

『なみのこえ 気仙沼』『なみのこえ 新地町』は、東日本大震災における津波被災者へのインタビュー映画『なみのおと』の続編。酒井耕・濱口竜介両監督は前作の完成から1年以上撮影を継続し、宮城県気仙沼市と福島県新地町の被災者、約20名の対話を新たに『なみのこえ』としてまとめた。人々が抱える問題も思いも発生直後とは違って来ている現在、出演者=インタビュイーは、夫婦や親子、友人、職場仲間たちとの会話の中で薄れて行く記憶を呼び戻し、思いを新たにして行く。

前作『なみのおと』では、津波被害の体験者同士が共に震災と向き合う「新しい言葉」をつくりだしていく過程が記録され、鑑賞者からは「言葉に強い現実感を感じた」という反応が多くあった。この現実感を未来の人々へも届けるため、監督達は劇映画の手法をドキュメンタリー映画に適用するという前作の様式を徹底する。日常-非日常、被災者-非当事者、聞くこと-語ること、被写体-鑑賞者、シリアス-ジョーク、二人の監督、フィクション-ドキュメンタリー、あらゆる分断線を越えた境界から未踏の故郷=現実は生まれ、震災を知らない100年後に暮らす人々と私たち、そして過去に生きていた人や動物やモノとを繋いでいる。

Storyあらすじ

酒井耕・濱口竜介の共同監督による東北記録映画三部作 第二部。前作『なみのおと』の手法を受け継ぎながらも、震災から時間を経て記録された対話者たちの表現はより自立性を増し、様々な声の混交する町の肖像が描かれる。


監督たちは前作を作る過程で出会った東北の伝承民話にヒントを得て、口承記録の方法を徹底する。これは震災という粗大な印象の底に隠れてしまった幾多の視点と声を蘇らせる事で出来事を100年200年の先まで伝える術であり、自然災害の現実感とそれに向き合う個々の人間の心象を観る者に理解させる。


飲食店を営む兄弟、役所の仕事仲間、夫婦、監督達自身、恋人たち、漁師の親子。彼らが過去を振り返りながら未来を目指して放つ言葉や表情のひとつひとつが、聞くことと語ることの間から生まれるとき、古来よりその土地の言葉が決して絶やす事の無かったもの、すなわち一番の被災者でもあった死者たちのこえへと接近することになる。

『なみのおと 気仙沼』『なみのこえ 新地町』の二編構成。大きな問題を抱えた場所の記録であると同時に、フィクションとドキュメンタリーの間を通り抜けて新しい記憶の創造へと向かった映画的探求の到達点。

Trailer予告篇

Director's Noteディレクターズノート

『なみのこえ』は、2011年に製作された『なみのおと』の続編であり、前作を踏襲する形で東日本大震災の津波被災者に対するインタビューから成る。前作『なみのおと』では震災から約半年後、岩手から福島に渡る広域で記録したのに対し、『なみのこえ』は震災から約一年後に福島県新地町と宮城県気仙沼市に絞って記録した。

私達がインタビューをしていく中で心がけたことは、聞く相手を被災の過酷さや体験談の鮮烈さによっては選ばないということだ。私達は出会った多くの被災者に「私たちよりもっと悲惨な体験をした人がいるから、そちらに聞いて欲しい」と何度となく言われた。地震でライフラインが止まった人、家の半壊した人、家を流された人、親しい人を流された人、家族を波に呑まれた人…。どこかにある「被災の中心」から離れるほど「語れない」。彼らは被災したにもかかわらず、被災した度合いによって「負い目」を感じているようだった。しかし、その「被災の中心」を求めて行く先は、もはや声なき死者である。決して聞けない「死者の声」が生き残った人々の声を封じていた。

本作に登場する21人は単に震災のことだけを語るわけではない。彼らは被災体験を語り合ううちにインタビューを「おしゃべり」へと変えていく。そこにあるのは「被災者」の声ではなく、彼ら一人ひとりの声だ。私達はこの声を100年先まで残したいと考えた。100年後の未来、私達は同じく死者であり、この映画は「死者の声」になっているだろう。この映画に収められた彼らの声と、今は聞くことのできない波に消えた声が、100年後の未来でつながっていくことを祈って、この映画『なみのこえ』は撮られている。

酒井耕/SAKAI Ko

1979年長野県生まれ。映画監督。現在の活動拠点は東京。東京農業大学在学中に自主制作映画を手掛け、卒業後、社会人として働いた後、2005 年に東京藝術大学大学院映像研究科監督領域に入学。修了制作は『creep』(2007年)。『ホーム スイート ホーム』(2006年)、濱口と 共同で東北記録映画三部作『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』を 監督。

濱口竜介/HAMAGUCHI Ryusuke

1978年神奈川県生まれ。映画監督。現在の活動拠点は神戸。東京大学文学部 を卒業後、映画の助監督やテレビ番組のADとして働いた後、2006年に東京藝 術大学大学院映像研究科監督領域に入学。修了制作は『PASSION』。劇映画 としては『親密さ』(2012)、『不気味なものの肌に触れる』(2013)を監 督。2011年~2013年にかけては東北記録映画三部作『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』を酒井と共同で監督した。

Theater上映履歴

地域 劇場名 主催 公開日
東京 P3 art and environment P3 art and environment 2015年3月21日
ドイツ ベルリン日独センター ベルリン日独センター 2015年3月11日
長野 かんてんぐら 東日本大震災の復興を考える会 2015年3月11日
宮城 チェスコ屋 日本イスラエル・サポート・プログラム 2015年3月7日
京都 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科デザイン学部門 2015年1月30日
兵庫 デザイン・クリエイティブセンター神戸 加川広重 巨大絵画が繋ぐ東北と神戸プロジェクト実行委員会 2015年1月18日
宮城 せんだいメディアテーク 対話の可能性「記録と想起」展 2014年12月21日
東京 新宿K’s cinema ドキュメンタリー・ドリーム・ショー山形in東京2014 2013年11月20日
東京 渋谷オーディトリウム 2012年11月9~22日
東京 渋谷アップリンク 2012年11月16日~
広島 横川シネマ 2013年12月22日~2014年1月3日
沖縄 琉球大学 Cimarcus 2014年10月4日
沖縄 沖縄大学 Cimarcus 2014年10月5日

Commentaryコメント

真正面に据えられたカメラによって、家族が、友人たちが、同僚たちが、語り手と聞き手が、それぞれの声と顔を持ったひとりの人間へと分割されていく。それが感動的なのは、そこで「他の誰でもないその人そのもの」が映しだされるからではない。そうではなく、対話相手との間合いや呼吸が、彼らの関係性が、ひとつの顔の中に描きこまれていくからなのだ。パーソナルな物語を語る彼らの声と顔ひとつひとつに、歴史や約束、愛といったソーシャルなものが既に織り込まれているからなのだ。

結城秀勇/YUKI Hidetake

映画批評/雑誌「nobody」編集部。同誌24号から36号まで編集長。共編著に「映画空間400選」(LIXIL出版)